痔を切らずに治せるの!?
今回は内痔核に対しての治療、『ジオン注硬化療法』についてのお話です。
内痔核(いぼ痔)は、肛門周囲の静脈が腫れてできる症状で多くの方が経験する一般的な疾患です。
痔には、痔核(内痔核・外痔核)や裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)などの種類があります。
最も多いのが痔核で患者さんの5~6割を占めます。裂肛、痔ろうはそれぞれ1~2割程度といわれています。
いずれの場合も症状が不快で、日常生活に影響を及ぼすことがあります。
【*提供:ジェイドルフ製薬株式会社】
近年、痔の治療法は進化しており、切開手術(外科的治療)だけでなく、切らずに治療する方法も増えています。
その一つが、日帰りで受けていただけるジオン注硬化療法です。
ジオン注硬化療法(別名:ALTA療法/アルタ療法)
脱出を伴う内痔核に対して行われる治療法の一つです。
内痔核の静脈にジオンというアルミニウム製剤を注射して痔核に流れ込む血液の量を減らし、痔核を硬くして粘膜に癒着・固定させる治療法です。
基本的には痛みを感じない内痔核に硬化剤を注射するので、痔核を切り取る手術と比べても痛みが少ないのが特徴です。
多くの場合は、局所麻酔を使用しない短時間で終わる手術です。
(※肛門鏡が挿入しづらい場合は、肛門を緩めるために局所麻酔を使用する場合があります。)
術後は、早い時期に痔核へ流れ込む血液の量を減らす効果があり、翌日には出血を止めて、脱出の程度も軽くします。
また、注入した硬化剤により静脈が硬化すると、内痔核が収縮して症状が軽減することが期待できます。
腫大していた痔核は1週間~1カ月かけて次第に小さくなります。
また、腫大していた内痔核によって引き伸ばされていた支持組織も元の位置に癒着・固定されていくことで、痔核の脱出が改善されます。
ジオン注射の成分
薬効分類名:内痔核硬化療法剤
ジオン注の有効成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸というものです。
硫酸アルミニウムカリウム:出血症状や脱出症状を改善する。
タンニン酸:硫酸アルミニウムカリウムの働きを調節する。
※ジオン注無痛化剤付 | ジェイドルフ製薬
ジオン注の投与方法
ジオン注はひとつの痔核に対して図のように4ヶ所に分割して投与します。
これは、痔核に薬液を十分に浸透させるための方法で、四段階注射法といいます。
内痔核は自律神経が支配する直腸粘膜の領域なので、通常痛みを感じない部分とされています。
四段階法で硬化剤を注入した後は、薬液をなじませるために痔核をマッサージします。
複数の痔核がある場合には、それぞれに硬化剤を投与します。
副作用について
副作用の報告例として、血圧低下、下腹部痛、嘔気(気持ちが悪い、胃のあたりがムカムカする)、肛門部の違和感、排便困難、痛み、出血、一過性にあらわれる発熱などがあります。
最後に
近年の医療技術の進化により、痔の治療法も多様化したきました。
痛みや不快感を伴う痔の症状を切らずに軽減する方法が増えています。
ただし、どの治療法も患者の状態によって選択肢が異なるため、必ず医療専門家のアドバイスを受けて治療を選ぶことが大切です。
今回紹介したジオン注射の治療は15分~30分程度で終了となります。
術後はその日のうちに家に帰れ、日常生活に支障をきたすことなく痔を治せるので、お仕事などでなかなか時間が取れないという方も、安心して治療が受けられます。
痔の悩みはデリケートな部分でもあるため、なかなか人に相談できないものと受診を躊躇される方も多いようですが、放置すると症状が悪化し、生活に支障がでる恐れがあります。
排便時に血が混じる、肛門から何かはみ出ている感覚がある、排便後にまだ便が残っている気がするなどの症状がある方は、早めに受診を心がけてください。
田守クリニックには、芦屋市だけでなく、近隣の西宮市や神戸市からも受診にきていただいています。
気になる症状がある方は、田守クリニックにご相談ください。